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『I.W.G.P.』
最初のレビューを書く時に乙一さんと石田衣良さんで迷って、結局は乙一さんについて書きました。
そのままズルズルと先送りにしてまいりましたが、ついにやります、『池袋ウエストゲートパーク』!!

『I.W.G.P.』ときいて、〔現在、外敵となった健介が巻いているベルト〕を想像された方、同志です。 
でも、今回は小説のお話なのでごめんなさい。(そちらのお話は、またいつか改めまして…)

ドラマでご覧になった方も多いかと思います。
長瀬智也、窪塚洋介、妻夫木聡、坂口憲二、山下智久、小雪、加藤あい…。
今となっては夢のような豪華キャストのレギュラー陣ですね。
僕もドラマの方も大好きでしたが、やっぱりあれは〈堤&クドカン・ワールド〉なのですね。
小説の『マコト』は、もっとクールでとびっきりホットで頭も切れて勇気溢れる人情に厚い男です。
ドラマしか観ていない人は、ぜひぜひ原作もお読みくださいませ。


第1巻は、全話名作ですね。
表題作の短編で新人賞を受賞してデビューされたわけですが、すでに魅力的なキャラクターと世界観はできあがっています。また文体がいいですね。かなりクールに計算して書かれる作家さんですが、この作品の『マコト』の一人称は本当にすばらしいです。まずリズムがいいし、彼の等身大の心情がヴィヴィッドに描かれてます。あちらこちらに煌めくような表現も散りばめられたりしていますし、読んでるだけで心地よいです。
『ヒカル』の物語は心打たれますし、『サル』の純愛にも涙しちゃいます。『マサ』や『シュン』や『和範』たちとの友情も胸に響くし、『加奈』との恋は甘くて苦い青春の味。そしてもちろん、『キング』がかっこいいのです。


第2巻は、やっぱり表題作の『少年計数機』でしょうか。
横断歩道の白線や、雑居ビルの汚れた窓、空を流れてゆく雲、心臓の鼓動や呼吸。全てのものを数え続ける少年は、自分は人間ではなくて、ただの〈計数機〉だといいます。そんな少年『ヒロキ』と出逢ったマコト。
2人の間の不思議な友情。そしてマコトは、誘拐された少年の、身体と魂を救い出すために池袋の街を奔走する…という物語です。感動です。
その他、ビデオ・チャットのモデルに迫るストーカーを退治し、老人を襲う連続引ったくり犯を追い詰め、女子高生監禁暴行殺人犯に制裁を与え
…と、マコトが〈トラブルシューター〉として大活躍する傑作短編集です。『サチ』や『ミナガワ』など、魅力的な人物たちのことも忘れられません。


第3巻も粒ぞろいです。ドラマのスペシャルにもなった表題作の『骨音』をはじめ、健気な少女との美しい友情を描いた物語、池袋発の〈独自の紙幣〉を流通させるという夢を追う男の話、レイヴとドラッグによる嵐の如くの
狂乱を描いた話など、それぞれの短編ごとに深い味わいと感動があります。
第4巻にきて、さすがに多少の失速は感じるものの、まだまだその辺の小説よりは頭1つは抜けています。読んで損などありません。


とにかくキャラクターたちがいいです。脇役も絶品ですが、やはり中でもマコトは、スーパーマンなどではなく、汗や涙や泥に塗れたヒーローとして、とてつもなくかっこいいです。マコトはそのハートに充ちた熱で、周囲を温かく染めてゆきます。だから彼の周りには素敵なやつらが集ってくるのです。

抜群におもしろいこの小説を読んでいると、ハラハラドキドキと胸躍らせることのできる〈冒険小説〉を夢中で読んでいた、幼い頃の気持ちに還ることができました。
あなたもマコトの後についていって、物語の世界を駆け抜けてゆく疾走感と、読後に波のようにして押し寄せてくる感動と、晴れ渡った青い空のように広がる爽快感を、その肌で感じてみてください。
池袋の汚れたストリートが、彼と一緒なら宝島に変わります。



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by seikiabe | 2004-11-30 19:09 | レビュー
目指せ名探偵! 論理編
b0030720_19281278.jpgずっと咳が止まりません。困りました~。
もし更新とかお返事が遅れちゃったら、ごめんなさいです。

さて、これまでは〈直観力〉を試す問題を出して参りましたが、
ここでちょっとだけ路線を変更してみまして、
〈論理力〉を必要とするミニ・ミステリを出題させていただきます。
簡単ですので、考えてみてくださいね。


 
今回は、古典的な「うそつきと正直者」のアレンジ問題にしますね。

*お約束*
    〈うそつき〉は、絶対に嘘しか言いません。
    〈正直者〉は、絶対に本当のことしか言いません。
    
    〈殺人鬼〉は、ときどき人を殺したくてたまらなくなります。
    
    登場人物は、みんな〈うそつき〉か〈正直者〉のどちらかです。
    〈殺人鬼〉も、〈うそつき〉か〈正直者〉のどちらかです。

 
 問1   アムロ   シャアが〈殺人鬼〉だぞ。
       カミーユ  僕は〈殺人鬼〉じゃないよ。
       シャア   我々の中には、少なくとも2人は〈うそつき〉がいるのだよ。

      3人の中に、1人だけ〈殺人鬼〉がいることが判っています。
      あなたは、彼らのうちの誰か1人と、チームを組むことになりました。
      どうしても〈殺人鬼〉だけは避けたいとすれば、誰を選ぶべきでしょうか?


 問2   ジュドー  俺は〈殺人鬼〉だぜ。
     シーブック  僕が〈殺人鬼〉だ。
       キラ    僕たちの中で、1人だけが〈正直者〉です。

       やはり、この中で、1人だけが〈殺人鬼〉です。
       さて、この3人はそれぞれ、〈うそつき〉と〈正直者〉のどちらでしょう?
       そして、〈殺人鬼〉は誰でしょうか?

     
   お答えを、お待ちしておりま~す!



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by seikiabe | 2004-11-26 19:52 | ミニ・ミステリ
『Good Luck』

Blogを始めてから、多くの人と知り合い、様々な考えに触れ、少しずつ自分が広がっていっているようにも思う、今日この頃であります。
風邪をひいてしまい、咳が止まらなくてかなり辛かったりもしますが。
さて、『Good Luck』というこの本、大ベストセラーなのだそうです。
でも、ぜんぜん知りませんでした。inablinkさんのお薦めがなければ、おそらく読んではいなかったでしょう。でもこうして出逢えたというのも、やはり〈すべては必然〉ということかな~、なんて思ったりもします。
今の僕にとって必要であり、僕自身も求めていたから、inablinkさんのお言葉にも耳を傾け、素直に読んでみようと思えたのでしょう。
そして、受け取ったバトンをまた次の人へと手渡すべく、こうして記事を書いてみました。誰か必要な人へとまた、連鎖は続いてゆくと信じて。

この本は、〈運〉と〈幸運〉の違い…を教えてくれます。

  呼び込むことも引き止めることもできない〈運〉とは違って、〈幸運〉は尽きないものである。
  そして、〈幸運〉を得る機会は、誰にでも平等に与えられている。
  けれども、それを手に入れるのは、偶然によってなどではなく、
  〈幸運〉を受け容れるための準備を周到に行った者だけである。

…というのです。なるほど~、と唸ってしまいました。
というか、それを解りやすく伝える物語自体が、とってもおもしろかったですね。
〈黒騎士〉と〈白騎士〉の2人が、〈魅惑の森〉に生えるという〈魔法のクローバー〉を探し求める…
というお話なのですが。たいへん楽しめました。公園の2人の方の話も、秀逸ですね。

ところで、本の写真をクリックしていただければ、僕の「ブクログ」へとリンクしてありまして、そこで
様々な人の、その本に対する書評が読めるようになっていたりします。(お気づきでしたか?)
しかし、この本に関しては、見事に〈賛否両論〉ですね~。
でも、この賛否両論こそが、〈黒騎士〉と〈白騎士〉の違い、そのものだとも思うのです。
同じメッセージでも、その人に受け取る意思があるかどうかで、〈意味〉は変わってくるのです。
学ぼうと思っている人にしか、学ぶことはできないのですね。

さあ、あなたにも〈機会〉は訪れましたよ。
あなた自身が〈求めている〉ならば、〈幸運の作り方〉を、この本から得ることができるはずです。



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by seikiabe | 2004-11-25 21:33 | レビュー
SNOOPY

b0030720_15214611.gifもしかすると、もうお気づきの方もおられるかもしれませんが、じつは
僕は、『スヌーピー』が大好きです。そして、大尊敬しています!
彼の笑顔に触れるたびに心が安らぎ、僕も笑顔になってしまいます。
彼を愛している人は、おそらく世界中にたくさんたくさんいるでしょう。
はたして彼は、どれだけ多くの人の心に幸せを届けてきたでしょうか?
それを考えると、尊敬せずにはいられないのですよ。
b0030720_15471622.gif
僕の身の回りには、彼のグッズが数多く存在しています。
コップ、お皿、お箸、、調味料容れ、歯ブラシ、タオル、時計などなど…。
彼の服を着て街を歩くこともあるし、彼のカバンは4代目になりました。
携帯の待ち受けやストラップ、スクリーンセイバーなどもそうです。
恥ずかしいので、秘密なのですが……。

b0030720_15471652.gifでも、『ミッキーマウス』は嫌いです。
〈黒目だけ〉の頃は、やんちゃボウズって感じでかわいいと思うのですが、
最近の彼の笑顔は、〈愛想笑い〉に見えてしかたがないのです。
だから、ディズニーランドには行ったことがありません。
スヌーピーが笑うのは、イタズラが成功したときなど、嬉しい時だけです。
特に、ウッドストックと一緒にいるときの笑顔は最高ですね。
b0030720_18334191.gif
ディズニーで好きなのは、『くまのプーさん』だけです。
彼は自然でマイペースなので、非常に好感が持てますね。
『シンデレラ』なんて、醜い物語の極みです。夢も希望も愛も、皆無です。
〔男は権力(金)、女はルックスが全てだ!〕というお話なのですよね。
王子が惚れたのは、彼女の健気な心ではなく、その美貌だけなのです。
というか、苦労知らずの七光りなんかと結婚するのが、幸せでしょうか?

b0030720_3535795.gif『美女と野獣』だって、最後に人間の姿に戻るんなら、意味ないです。
見かけではなく中身に惚れたんなら、そんな必要ないでしょ?
それに野獣だって、〈美女〉だから惚れたんでしょ? 
そこに愛など、始めからありはしません。
その点、『シュレック』の方が、はるかにいいお話ですよね。
ディズニーの物語は、単純で浅すぎるお話が多い気がします。
b0030720_15471656.gif
ま…それはともかく、僕はスヌーピーが大好きなのです。
彼の万分の一でも、人々に笑顔を届けられる存在になりたく思います。
みなさんは、どんなキャラクターがお好きでしょうか?
(ディズニー・キャラだったら、本当にごめんなさい)
僕は他には、l『お茶犬』や、『ぴちょんくん』なんかも好きです。



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by seikiabe | 2004-11-24 19:20 | 雑記
目指せ名探偵! 再び
b0030720_15214725.gif正直に言いまして、『自由人』というお話をこのBLOGにアップするか
迷ったのですが(軽く読みやすい雰囲気の場所にしたかったので)、
結果的には予想外に反響も大きくて驚きました。
その中で登場人物の唱えた過激な〈平和論〉に対しても、たくさんの
ご意見をいただいて、僕自身にとっても、戦争や平和や宗教などに
ついて、改めて考え直すきっかけともなりました。
答えなど出ることのない問題ではありますが、一生をかけてずっと
考え続けていきたいと思います。
 inablinkさんはじめ、ご意見等をくださったみなさまに、深くお礼をもうしあげます。
 本当にありがとうございました。


 え~、ということで、また軽いノリに戻らせてもらっちゃいますね~。
 それでは、久しぶりに、と~っても簡単なミニ・ミステリを1つ。

   レオとナッシュは、幼馴染でした。
   子供の頃から何をやるのも一緒だったのですが、やがて成長した2人は、
   レオは警官になり、ナッシュは裏の世界の住人になったのでした。
   
   ナッシュは組織の中で、主に〈運び屋〉の仕事を行っていました。
   宝石や絵画や麻薬などの密輸をしたり、得意の運転技術をいかして、
   人や盗品などありとあらゆる物を〈運んで〉いたのです。
   レオは何度もナッシュに、足を洗って真面目に働くように説得しました。
   そんな熱意に負け、ナッシュも「わかった。真面目になる」と誓ったのですが、
   結局組織を抜けることはできず、彼はとうとう刑務所に入ることになりました。
   
   そんなナッシュが出所して半年ほど経った頃、レオはある噂を耳にします。
   ナッシュがまた運び屋をやっているというのです。
   レオは苦労の末に、ナッシュの隠れ家を突き止めました。
   張り込むレオの前に、ナッシュが手にジュラルミンのケースを持って出てきました。
   周囲を警戒するようにしながら、車に乗り込むナッシュ。ケースは助手席です。
   ナッシュが車を発車しようとした瞬間、レオの車がその進路を塞ぎました。
   
   「ナッシュ、俺は警官としてきたんじゃない。おまえの親友としてきたんだ」
   その言葉にナッシュもうなだれます。
   「そうか、レオ。だが、おれはもう組織は抜けた。真面目に働いてるんだよ」
   「嘘をつくんじゃない。まっとうに働いていて、こんな車に乗れるものか」
   「本当だよ。信じてくれよ、レオ。今やってる商売がうまくあたってそれで…」
   「なら、その助手席のケースを開けて見せろ」
   ナッシュは一瞬だけ躊躇したものの、ケースのフタを開きました。
   
   だがしかし、その中身は空っぽでした。
   ケースを念入りに調べましたが、なんの仕掛けもありません。
   レオは、車の中をくまなく調べることにしました。
   座席、トランク、ダッシュボード、扉に床に天井…。いくら探しても怪しい物はみつかりません。
   せいぜい雑誌やCD、それに書類や封筒がいくつか出てきたくらいです。
   今度はナッシュの身体検査を徹底的にしました。
   「時計はただのデジタルか…」
    財布、鍵、タバコ、ライター、携帯電話。財布の中にもやはり不審な物はみつけられません。
   
   「どういうことだ、どこに隠した?」
   「何を隠したっていうんだ。はじめから何もないさ」
   「いったい何を運ぶつもりだったんだ。麻薬か? 宝石か?」
   「だから、言っただろ。もう運び屋はやっちゃいないって」
   「この書類と封筒と…そうだな雑誌とCDもだ。持って帰って調べさせてくれないか?」
   「……解ったよ。それで、疑いが晴れるなら好きにしてくれ」

   2人が別れた後、荒らされた車内や持ち物を軽く整えて、タバコを吹かしながら…
   「ふ~、やばかったな。やっぱりそろそろ潮時かもな…」
   ナッシュはそうつぶやくと、今日運ぶ〈品物〉に、軽く口づけをしました。
   「やべえ、約束の時間に間に合わなくなるぞ」
   時計を見たナッシュは、スピードを上げて夜の闇へと消えていきました。
   
   さて、ナッシュはいったい何を、そしてどうやって運んでいたのでしょうか?


 (簡単なので、自信のある方は〈非公開〉で解答していただくとありがたいです)

 
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by seikiabe | 2004-11-22 18:28 | ミニ・ミステリ
〈名探偵〉いろいろ
 最近なんだかずっと、ミステリの紹介をしていませんでしたね。
 やっぱり『Ditective Story』というタイトルにはしなくてよかったかも…ですね。
 というか、このBLOGって、すっかり寄せ鍋状態ですね~。統一感というものが……。
 それはともかく、今回も〈探偵小説〉の傑作をご紹介させていただきます!


まずは、『猫探偵正太郎』くんのシリーズです。
『RIKO』や『炎都』などのシリーズで有名な柴田よしきさんが、ご自身の溢れる〈猫への愛〉を炸裂させたミステリです。
現在、長編が2作と短編集が3作、発売されています。
〈本格ミステリ〉のファンおよび、無類の〈猫好き〉の方にお薦めです。
特に短編集は、正太郎くん自身の目線で語られたお話と、正太郎くんと(いろんな形で)出逢う人間の視点から描かれた物語が、交互に入っていて味わいのあるものになっています。
〈日常の謎〉というよりは、殺人などの事件を描いたお話ですね。
親友のサスケ(チャウチャウ系雑種犬)や、〈同居人〉である桜川ひとみたちとの友情あふれるやりとりも楽しく、人情味にも溢れたお話です。


つづきましては、『人形探偵鞠夫』くんのシリーズです。
『かまいたちの夜』の作者としても有名な我孫子武丸さんの作品です。
奇跡の傑作の『殺戮に到る病』も好きですが、この『人形探偵シリーズ』(4作まで出ています)は、本当に僕の大好きな作品です。
我孫子さんの文章とユーモアセンスには、いつも感心してしまいます。
普段あまりミステリを読まれない方、特に女性の方にぜひぜひ読んで
いただきたい作品です。
主役は妹尾睦月という保育士の女性。そして彼女が恋に落ちるのが、内気な天才腹話術師の朝永嘉夫という青年です。
そして彼の相棒の人形が、我らが《鞠小路鞠夫くん》なのです。
口が悪いけれど憎めない鞠夫くんはなんと、朝永さん本人も驚く〈名探偵〉だったのです!
2人のもどかしい恋愛模様と、キュートな鞠夫くんの名推理。とってもほのぼのタッチのお話です。
まだ読まれたことのない方は、要チェックですよ~。


そして今回最後にご紹介しますのが、『安楽椅子探偵アーチー』です。
ミステリの世界で『安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)』という言葉があります。つまり、実際に捜査に奔走したりすることなく、事件の状況を説明してもらうだけで、たちどころにその真相を推理してしまう…という名探偵のことです。クリスティーの『ミス・マープル』や、ヤッフェの『ブロンクスのママ』のシリーズなどが有名でしょうか。
ミステリとしてスマートで、僕自身がもっとも好むスタイルでもあります。
しかし、文字通り〈安楽椅子〉が〈名探偵〉となってしまった!というこの作品にはちょっと驚きましたね。
長い年月を経て、しゃべるどころかホームズのような推理力を持つほどになった骨董の安楽椅子と、それを手に入れた小学生・衛との奇妙な友情を描いた作品です。
正直ミステリとしてはちょっと弱いかな~とも思ったのですが、この奇抜なアイデアに感心したのと、そしてジュブナイルとして子供が読むにはとってもよいかな…と思ってご紹介いたしました。


しかし、いろいろな〈名探偵〉がいるものです。(まだまだたくさんいるので、また紹介しますね)
僕自身の書いた『ハート家の名探偵』の場合も、既存の名探偵に対するアンチテーゼから生まれた作品です。そして、〈誰が名探偵か?〉というのが、第1の謎となっております。
もしもよろしかったら、読んでくださると光栄です。


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by seikiabe | 2004-11-19 11:16 | レビュー
自由人
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  ……この部屋では、時が停まっている。フィオ・スレイバーには、それは真実だと思える。
ありふれたアパートメントの一室。その玄関に入った途端に独特の空気感に包まれるのは、
ここの住人が社会や常識といったものから隔絶した感覚で生きているからなのであろうか。
 フィオは、久しぶりに訪ねたこの場所が変わらぬ固有の雰囲気を保っていたことに安堵し、
小さな感動を覚えていた。やはり自分はこの空間に安らぎに似た感情を抱かされてしまう。
  そして、ここに住む旧友のことを心の何処かで必要としていたのだ、とも自覚させられる。
「遅いな、フィオ。何をやっていた?」
 思わず時計を確かめる。約束の時刻よりもまだ15分ほど早い。
〈フフ‥‥相変わらずだな〉
 約1年ぶりの突然の電話に、仕事を無理に切り上げてまで律義にやってきた自分自身も、
それなのにまるで1時間も遅刻してきたかの様に責める相手の身勝手さも妙に可笑しくて、
フィオは軽く微笑みながらネクタイを緩めた。
  殺風景な部屋の片隅に座った《ギアス・マードル》の顔は、やはり1年前のままである。
というよりもこの男は、容姿から考え方までハイスクール時代からまるで変化がないのだ。
 揺るぎない意志の力を示す強い眼差し。激しすぎる精神を閉じ込める引き締まった肉体。
自信と情熱と野望に充ち溢れた男がそこにいた。放射されるオーラすら目に視えるようだ。
 フィオもこの部屋で過ごした時間の分だけは他の人間より若いという自負はあるのだが、
ここの住人にはかなうはずもない。肉体年齢は精神のそれに左右される、〈自由人〉とは
誰にも何にも縛られない。法はもちろん、時の流れにすら俺は束縛されないと奴は言った。
そもそも時間とは、完全に〈主観的存在〉なのだとも。
  卒業を前にしたある日、ギアスはみんなの前で自分は〈革命家〉になるのだと宣言した。
だがそれを聞いた者は嘲笑に近い笑みを浮かべた。なるほどな、と1人がフィオに呟いた。
やはり〈変人〉は違うな、そんなニュアンスである。まったく勉強などはしないし授業さえも
聞かないくせに常にトップの成績を維持し続けていたギアスであったが、エキセントリック
な言動からまさに〈紙一重〉だという評価を得てもいた。
「フィオ、もし俺に友人がいるとしたら、それは君だけだ」…そう告白され、フィオは戸惑った
ものである。成績や運動も平均並で特技の1つすらない自分などに、何故この個性溢れる
天才が心を開いたのか解らない。「君は実にユニークな存在だ」という言葉も納得いかず、
おまえには言われたくないッと思った。彼の暴言や奇行の数々は枚挙に暇がないほどで、
なぜギアスと友人でいられるのか誰からも不思議がられていた。
  やたらと喜怒哀楽の激しい性格で、とりわけ〈怒り〉の感情を常に周囲へと発散する男。
いつも誰彼となく議論を吹きかけ、そして独善的な論理で相手を打ち砕き、それでもなお
悔しそうな顔つきのまま去って、そしてまた次の獲物を発見しては噛みつく日々。
  彼の革命とは、地球上から全ての〈国家〉や〈民族〉や〈宗教〉という概念を根絶すること
にあるらしい。「〈神〉に祈る奴らは全員、〈地獄〉に堕ちろ!」と、ギアスはよく吼えていた。
  たとえどんな宗教であれ、誰かが造ったものである。つまり、既存の宗教を信じるのは、
自ら〈真理〉を追究せずに、思考を停止し、他人の思想や理念を模倣して生きることである。
己の頭で考えることを止めた者は、〈愛〉や〈正義〉の名の下にて〈異教徒〉を殺戮すること
すら善とする。したがって〈宗教〉がある限り〈平和〉など永久に訪れない…ということらしい。
  フィオには親友の主張は到底理解できないが、彼の目を見てその言葉を耳にしていると、
こいつには〈世界を変える力〉があるかもしれない、そんな風に思えてしかたないのだった。


"the freeman"




え~、近頃のうちのblogの傾向からは明らかに浮いていますが、音羽さんinablinkさんの作品に刺激を受けて、こんな感じのもアップしてしまいました。〈自分を信じ抜く強さ〉、欲しいものですね。
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by seikiabe | 2004-11-17 12:00 | ショートショート
声の演技

みなさん、やっぱり『ハウルの動く城』は観ますか?
僕は五分五分ですね~。
キムタクじゃなかったら100%観たいんですけど。

〈声〉って、僕にとってすっごく重要なファクターなのです。
もしかしたら、〈顔〉よりも重くみているかもしれません。
声を聴けば、誰の声かはほぼ確実に解ります。知り合いはもちろん、CMのナレーションとかでも。
〈目〉とか〈舌〉はないんですが、〈耳〉は持っているつもりです。
だから僕にとって、〈声の印象〉ってかなり大切なんですよね。
それに、アニメや洋画の吹き替えの場合だと、そこに〈演技〉も加わりますからね。
たとえば洋画なんかだと、同じ映画だとしても、字幕版と吹き替え版さらに声優さんが違うテレビ版とでは、評価がまったく変わってきます。
上手な声優さんの場合だと、オリジナルより良くなる場合もありますし。
〈訳〉とか〈日本語演出〉によっても、ぜんぜん違ってきます。極端な場合には、あるバージョンでは〈すごくおもしろい〉作品が、別のバージョンで観ると〈ぜんぜんつまらない〉…というほどまるっきり印象が異なることもありますから、油断できません。
最近はDVDに字幕も吹き替えも両方入っていて、すごく助かります。今までは両方とも借りてきて比べたりしてましたからね。それでも、テレビ版のあのときの吹き替えが最高に良かった…なんて場合もあったりしますが。

しかし、声優でもない人を使うのは、論外ですね。
話題性だけで、素人に声優をやらせるのは本当にやめてほしいです。
声優の演技と普通の俳優の演技って、別物ですから。
そんなこと200も解ってるはずの宮崎監督が、なぜ素人ばかりを使うようになったのでしょうか?
おそらくは、声優さんの型どおりの〈80点〉とか〈90点〉の演技に飽き足らなくなって、それ以上を求めているのでしょうが‥‥結果はみんな〈50点〉以下になっちゃってますよ。監督~。
役者本人の顔が浮かんでしまって、一歩も映画の世界に入れないんですけど。

それにしても、キムタクって……。
役者の演技があれなのに、声優ができるとでも思ったのでしょうか?
肝心の主役がダメダメじゃ、何年もかけて何万枚の絵を描こうとも脚本がどれだけおもしろかろうと音楽がすばらしかろうと、全部ドブに流しちゃったのと同じですよ。それでもいいんですか?!
あまり声にこだわってない人でも、いくらなんでもキムタクだとさすがに怒るんじゃないですかね?
完全に理解不能です。
英語版の字幕付きとかで観るしかないですかね~?

あと、『ルパン三世』。そろそろなんとかなりませんか?
山田康雄さんが天才すぎて、誰がやっても越えられないと思いますが、とりあえず演技が上手くて声がかっこいい人に代えてください。
年に1回やるのなら、毎年変えてみてはどうでしょうか?

あ、それから、もう『ハウル』をご覧になった方がいましたら、ご感想教えてくださいませ~!

追記:ドラえもんの主要メンバーが全部代わっちゃうなんて、寂しいですね…。


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by seikiabe | 2004-11-16 09:18 | 雑記
『そのときは彼によろしく』

市川拓司さんの4冊目の本です。
感想としては、とってもおもしろかったです。
文章や会話なんかは、今までで一番好きかもしれないです。
ただ、〈泣ける〉という部分では弱いので、そればかりを期待されている人にはどうかと思いますが。
でも、『いま、会いにゆきます』の(原作の)ファンの方なら、「にやり」とするでしょうね。
なんせ、〈ゴミ集めが大好きな佑司くん〉が登場するんですから。
しかも、「ヒューウィック?」と鳴く(?)老犬を連れて!
『恋愛寫眞』(小説のほうです)を好きな人も楽しめるでしょう。
というかこの人、〈手も品も変えず〉にまったく〈同じモチーフ〉だけで全ての作品を書いてますよね。
〔走るのだけが得意で恋愛も人づきあいも苦手で内気でダメなぼくが、ちょっと個性的な女の子に好きになってもらえて救われる。でも彼女には常識ではありえない出来事が起こってしまって…〕という話ですよね、全部。
ま、いいんですけどね。おもしろいから。
それに作家にとって、自分がノッて書けるというか、本当に語りたい重要な〈テーマ〉とか〈モチーフ〉
なんて、そんなに数多くあるわけじゃないんですよね。(市川さんほど極端な例も珍しいですが)
宮崎駿監督だって、全部が〔お姫様を助け出す話〕なわけですし。〔空を飛ぶ〕も、必ずですよね。
僕なんか、昔は絶対に〔人類が滅んでしまう話〕しか書けなかったですから。切腹~っ!…ですよ。
本当にお恥ずかしい。
とにかく、僕は『そのときは彼によろしく』、好きです。
ただ装丁は、『いま…』に近いものか、できれば美しい水槽か池の写真にしてほしかったですね。
タイトルは、『ずっと、待ってるからね』…なんてのどうだったでしょうか? 
そうすれば、かなり売り上げも違うと思いますが…。うー、なんて醜い発想だ~、切腹~っ!!


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by seikiabe | 2004-11-14 01:24 | レビュー
大人のための絵本
絵本が好きです。
エリック・カール、モーリス・センダック、マーカス・フィスター、アンドレ・ダーハン、レオ・レオニ、
五味太郎さん、佐野洋子さん、長新太さん、島田ゆかさん、安野光雅さん、中川李枝子さん……。
豊かな発想とすばらしい表現力によって描かれた個性溢れる素敵なワンダーランド。
幼い頃から今日まで、僕を惹きつけてやみません。
絵が描ける人には、とっても憧れてしまいますね。

そして、最近ではどこの書店にも、大人向けの小さな絵本のコーナーがありますよね。
子供のいる人だけではなく、自分のために絵本を買う大人もたくさんいるということなのでしょう。
そんな中で、僕の気に入っている作品を幾つか紹介させていただきます。


まずは、かとうようこさんの『会いたくて… ただそれだけで…』です。
完全に一目惚れでした。
何十冊とある似たような本の中で、この本だけが心に飛び込んできて住みついてしまいました。
彼女もまったく同じ気持ちだったようなので、2人して笑顔でもう一冊の『ぜったいまもってあげるから…』も手にしてレジに向かいました。
まったく気取ってないところがいいですね~。
素朴といいますか、〈まっすぐ〉なお気持ちが、胸に響いてきます。
大人になってこれほどの純粋さを保たれているのはすごいことです。
僕も、この本を読むとなんだか素直な自分になれます。
失礼ながら、絵も字も〈お上手〉とは言えないのですが、すごく味があって非常に好感がもてます。
また、色使いがとってもすばらしいですね。
この鮮やかで優しい色を眺めているだけでも、心が楽しくなってきます。
1冊に3つの作品が入っていて、恋してるときの世界が華やいで見えたりまた不安に囚われたり…という気持ちを描いた表題作と、ココロが重くて飛べなくなってしまったときの『飛べない夜の歌』、不安な人生もはなうたまじりに歩いていこう…という『みえない橋も歩いていける』が入っています。






つづいては、『よこしまくん』です。
彼はフェレットなのですが、いつも青のボーダーのシャツを着ています。
じつはそんな服を何着も何着も持っていたりするのですが。
彼はとっても〈ひねくれ屋〉で、自分の気持ちに素直ではありません。
本当はけっこういいやつなのに、口にするのは反対のことばかり。
すごくうれしいときに「ばっかじゃね~の~」なんて言ってみたり。
口が悪くて人づきあいがヘタクソで、色んなことにものすごくこだわりを持っていたりする、よこしまくん。
どこかの誰かと似ている彼は、とっても憎めないキャラクターです。


そして、『リラックマ生活 -だらだらまいにちのすすめ-』です。
とにかくのんびり屋というか、なまけものというか、
〔明日でもできることは、今日はしない!〕…という、
〈お気楽極楽〉な彼の、だらだら生活を描いた作品です。
しかし彼は彼なりに、すごくポリシーを持ってだらけているのです。
のんびりゆっくり…より道や休憩ばかりの人生を謳歌しています。
そんな彼のメッセージを聞くことで、忙しい日々を送っているあなたも微笑みながら肩の力を抜くことができるかもしれません。
お友達のキイロイトリのツッコミが、またいい味出してます。


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by seikiabe | 2004-11-11 23:34 | レビュー