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〈アート〉と〈エンターテインメント〉

〈アート〉と〈エンターテインメント〉_b0030720_1462471.jpg〈芸術〉とは、なんでしょうか?
人によってその解釈や定義はそれぞれ異なるでしょうが、僕は
〔作者自身のための、創作〕…を、〈アート〉と定義しています。
自分が描きたいものを描きたいように描いた絵画であるとか、
自分自身が救われるために紡がれた詩などが、アートです。
それに対して、周りの人を楽しませたり喜ばせたりすることを
第一義として創られたものを、エンターテインメントと呼びます。
ジャンルの問題でもレベルの問題でもなく、目的の違いです。
たとえ自分のために創り出したアート作品であっても、それに
触れた人たちが感動することは大いにありうるでしょうし、逆に
多くの人に楽しんでもらおうと思って創られた作品であっても、
単なる独りよがりにすぎない…と評価されることもありえます。
しかし問題なのは、作者の目的意識です。結果ではありません。
特別にそういった意識をすることなく創作を行っている人も多いでしょうが、やはりどちらかに
二分されるものだと思います。あなたの作品はどうですか?
ちなみに、僕はこのブログをエンターテインメントとして、書いています。
もちろん、自分が書きたいから書くのだし、書きたくもないことは絶対に書かないのですが、
読んでくださった人にとって、ちょっとでも楽しいことが増えてほしい、わずかなりとプラスに
なってもらいたいという願いを込めながら、キーを打っております。
以前アップした〈自由人〉という作品だけはアートですが、その他の小説やレビューなどは、ほとんどがエンターテインメントです。
本当に読者に喜んでいただけたかはともかく、僕の目的としてはそうなのです。
でも、今回の記事はかなりアーティスティックになってますね~。ごめんなさい。

あまりにも優れた〈アート〉作品は、反対に、凡人が理解することはできなくなります。
才能ある人が才能ある人のために創り出したものなので、レベルが高すぎるのです。
芸術で食べていくことが困難なのは、そのためです。
死後に評価されれば、まだよいほどでしょう。
まあ、自分のために創った作品なのに、他人様からお金をいただこうというのが、そもそも図々しいことなのですけれども。だからといってエンターテインメント作品を創ることもできず、
アートすることでしか生きていけない人こそが、真の〈芸術家〉です。
その辺のミュージシャン連中が、アーティストを名乗るのは不遜です。シューマンやゴッホ
や中原中也たちに、手を付いて謝ってほしいと思います。
『あいだみつを物語』を観ながら、なんだかちょっと考えました。(ノリさん、好演でしたね~)

また、たとえばハリウッド映画はエンターテインメントで、ヨーロッパ映画はアートです。
それは、映画というものを、それぞれの国の人たちが、そういう風に捉えているからです。
ハリウッド映画は誰にでも解り易く、最後にはハッピーエンドが待っています。
ヨーロッパ映画は非常に独創的ですが、不親切で、カタルシスもあまりありません。
どちらも一長一短ですよね。
たとえば、フランスのリュック・ベッソン監督。彼の出世作である『二キータ』という映画は
ご覧になられたでしょうか? そして、そのハリウッドでのリメイク作である『アサシン』。
この両者を連続で観ると、非常に興味深いです。

そのリアルな演出とか重苦しい空気感など圧倒的に『ニキータ』が勝っていて、まさに〈大人と子供〉という感じです。
それに比べて見事に薄っぺらな『アサシン』なのですが、その観易さや解り易さ、そしてラストなどのストーリの変更点、それによって生まれたカタルシスなど、なかなかどうして『アサシン』が上回る部分も多いのですよ。
最終的には、好みの問題になるでしょうね。


そして、ハリウッドに渡ったリュック・ベッソンが創り出した、『レオン』。
これこそが、ヨーロッパとハリウッドの映画、つまりアートとエンターテインメントが融合し誕生した
両者の長所を併せ持った大傑作となるのです。

『二キータ』で、〈掃除人〉として登場したジャン・レノのキャラクター(ちなみに『アサシン』では、ハーヴェイ・カイテルが演じています)
を膨らませた物語で、クールな殺人機械としての顔と、とぼけたいい親父の顔を持つレオンが、非常に愛すべき人物像になっています。
ニューヨークを舞台にしながらも、どうみてもヨーロッパの街並みだとしか思えない独特の色遣い。ユーモラスなシーンと迫力あるカットの両方が肌理細やかに描かれ、通奏低音として流れ続ける哀しみの響きが加わった物語は、じつに美しく…儚く…魅力溢れるものです。
そして、激しく盛り上がるクライマックスの後に訪れるのは、あまりに切なすぎるハッピーエンド。涙と感動が止まりません。奇跡のように完璧なバランスです。ベッソン自身も二度と再現できないほどに…。


たとえば、黒澤明監督や宮崎駿監督の、あまりにもこだわりすぎの芸術的娯楽映画。
『ファースト・ガンダム』や『旧ルパン』など、時代よりも先に行きすぎて、理解されなかった作品。
天才アーティストの松本人志と、豪腕エンターティナーの浜田雅功の名コンビ、『ダウンタウン』。
アートとエンターテインメントの接点にこそ、もっともすばらしい何かが生まれるような気がします。

軽い感じで書き始めつつも、けっこう長く、なんだかレビュー風にまでなってしまった今回の記事。
これでは完全に、エンターテインメントとしては失格ですね~。
それでも、こんなような文章からでも、わずかでも何か拾ってくださる人のいることを信じて……。



by seikiabe | 2004-12-14 23:01 | 雑記


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